門限の9時

ここに無い魔法 帰りの電車

映画「暗殺教室〜卒業編〜」 感想

映画「暗殺教室〜卒業編〜」を観た。無事に観れた。

 
 
1年前、前作である「暗殺教室」が公開された時、私は就職活動を始めたばかりで、今日を明日に繋げることで精一杯だった。ただ、1年後の自分の無事だけを祈って。そのために朝起きてスーツを着てパンプスで歩き続けていた。
 
 
映画への出演が決まると、その映画が公開される1年後の自分を想像してしまう。
そして、1年後の自分が泣いていないか、辛く苦しい思いをしていないか、そんなことを考えてしまう。
続編が決まった時もそうだ。「2016年3月公開」の文字に楽しみは少しもなかった。就職先が決まってなかったら、卒業できなかったら、映画どころじゃない。考えたのは"最悪な事態"に直面している自分だ。
一寸先も闇だ。でも、目の前の就職活動が、ゼミが、授業が、きっと1年後の自分を笑顔にさせる。そう思って、そう言い聞かせて毎日過ごすことしかできなかった。
 
 
昨年の前作の公開から、続編である今作の公開までの1年間、私は、就職活動をして内定を貰い、この先を生きていける約束みたいなものを手に入れた。1年前は、テーマすら決まっていなかった卒業論文も書いた。提出して教授から「すごく良かった」と褒められた(笑)。1年前は、確定していなかった卒業も、出来た。
前作の時には、何一つ確実になっていなかったものたちを、この1年で何とか確実なものにすることが出来た。言い換えれば、変化の大きい1年だった。
 
あの時、なにも見えなかった、いや、片鱗すらなかった1年後を生きている。そして、「暗殺教室〜卒業編〜」を観た。
無事に、1年後を生きて、映画を観に行くことが出来て、本当によかったと思う。
 
 
 
 
 
確か雑誌「FLIX」のインタビュー。この言葉が山田くんらしくて私はすごく好きだ。
山田くんは昔から「目標は定めないタイプ」だとか、「ゴールは見えない方がいい」だとか、「目標より今が大事」というスタンスで生きていたのを私はずっと見てきた。
 
私は、好きなアイドルの映画出演が決まった時、真っ先に映画が公開される1年先の心配をしてしまうような人間だ。
何をするにも、じっくり考えてからでないと、先の見通しが立たないと、ゴールが見えないと動けない。
1年先だけじゃない。1ヶ月、いや、毎日、どんなにちっぽけでも毎日目標を必ず立てるし、目標を達成するために動くことで今を生きていると感じる。
 
でもこの1年、考えても考えても見通しなんて立たなかったし、それでも想像してしまう"最悪な事態"を回避するために、今何をしたらいいのか、何ができるのか手掛かりも何もなかった。そんな不確実だったもの、つまり0だったものを、私はこの1年で1に、少しだけ確実なものに出来た。まだ不透明感はあるけれど。
気がつけば、山田くんと同じ「ゴールの見えない」生き方をしていた。山田くんの場合は、「見えない」のではなく、「見ない」生き方かもしれないけれど、答えが分からないまま今を生きている点では同じだろう。
 
その生き方は、しっくり来ることはなかった。暗闇の中を明かりも持たずに進むような毎日に不安は尽きない。失敗したらと考えると足は竦む。目標に近づく手応えのようなものもない。
でも、考えても考えても答えが出せないこともあるし、答えが出てなくてもどうにかするしかないこともある。
なにより、スタート地点で答えなんか出てなくたって、歩くルートが決まってなくたってどうにかなる。
そういう毎日も悪くなかった。今、私は、こうして映画を観に行けたから。私が1年前に想像していた今より、随分心軽やかに過ごせている。心配症なので、相変わらず考え事や悩みは尽きないし、ちまちま目標を立てて、一個一個クリアして行くことで生き延びている。
でも、考えてから行動に移すまでの時間はかなり短くなった。あれこれ綿密に考えなくてもその場その場でどうにかすればいいかと思えるようになった。人並みにとまではいかないけれど(苦笑)。
なんとなく、「胸を張れる暗殺をしましょう」という殺せんせーの言葉が、私の超慎重な生き方と山田くんの生き方の中庸に居てくれているような気がしている。
 
 
「卒業」が今作のテーマだった。
前作では、殺せんせーを暗殺するという「目標」は、なんだか現実味のないものだった。
でも今回は、殺せんせーとの別れが目の前まで迫ってきていた。
 
3年E組のみんなは、みんなで、ひとつの「卒業」の形を選んだ。ぶつかり合ったけど、みんなで決めたからそれでいいと思えた。それがいいと思えた。
悲しいけど、寂しいけど、それがいい。それしかないって思えた。
 
 
原作の実写化は、どんな作品でも賛否両論がある。
見応えのあるアクション、やり過ぎなくらいの炎や爆発音を出す演出、生徒一人ひとりのキャラクター、長い原作を2時間で収める脚本。
全部、これしかないと思った。実写版の模範解答だと思った。
 
漫画を実写化するのってそもそも次元が違うから無理がある。
「渚はもっと華奢だ」という人がいるけど、原作者の松井先生も仰るように、あれだけのアクションを再現するには、山田くんの筋肉や体格は必要なのだ。
「渚だけ、髪の毛の色が違う」という人がいるけど、カルマの赤髪やビッチ先生の金髪と、水色は訳が違う。
もし原作通り山田くんが水色に髪を染めたとしたら、それはそれで見るに堪えないものになっていたように思う。
 
 
演出ひとつひとつ、セリフひとつひとつ、目線、仕草、全てにちゃんと意味があると感じた。
きっと原作の漫画もそうだ。
どんな作品も連載を読むと、「それページ稼ぎだろ」「そのエピいる?」みたいに感じる瞬間がよくある。でも、原作は原作でそういうページやエピソードも、原作のアイデンティティーとしてきっと必要なんだと思った。
 
原作潰しの実写化は、数多あるが、「暗殺教室」の実写化に関しては、これ以外の解があるなら挙げてみろよ、と思うくらい、納得の出来る実写版になったような気がする。
主演の山田くんや菅田くんはじめ、出演者やスタッフのみなさんが原作愛をきちんと持っているのが伝わってきた作品だったし、逆に、原作者の松井先生が実写化に伴ってあらゆることを寛容に理解してくださったんだなということも痛感した。
前作の時から、松井先生の気さくさや寛容さには驚かされっぱなしだった。
バクマン。」でジャンプで連載を持つ漫画家やスタッフの激務さを刷り込まれていたからか、連載中にも関わらず、メディアに出て、取材を受け、しかも公開される仕事場はいつもキレイにされていて、松井先生も漫画家とは思えぬ清潔な格好をされていて。
しかも今作では、連載を映画と連動させてくれ、しかも映画の脚本にまで関わってくださるという協力ぶり…
さらに、映画も絶賛してくださって。
 
原作者の松井先生が、本当に惜しみなく力を貸してくださって、実写版にも愛を持ってくださったからこそ、出演者、特に山田くんが矛先を向けられることなく、映画を観る人も原作ファンも気持ち良くこの作品を受け入れられるような気がする。
 
本当に松井先生のお力添えは大きい。
 
 
あと、お力添えといえば、もう一人。
殺せんせーの声と死神役をやってくれたニノ。
日本アカデミー賞最優秀主演男優賞二宮和也さんが主演じゃないんですよ?しかも、主演後輩なんですよ?
後輩の主演作にも関わらず、素敵に死神を演じてくれてて。しかも、その死神が儚くて本当に素敵で。
物語を作る1ピースになってくれててありがたかったし嬉しかった。
 
表情も言葉も自然で、本当にすごいと思った。あんなにずぶ濡れになって、アクションシーンもやらされて後輩より身体張らされて。それでも「ニノだ」って変に悪目立ちせずに、ニノ自身も「二宮ですけど」って偉ぶることなく本当に自然に演じて物語に溶け込んでくれてて…山田くんよかったねって。前作では「花を添えてくれて」なんてことしか言えなかったけど、今作では「出てくれてよかった。力を貸してくれてありがとう!」って思えた。
 
あと、何より茅野役の山本舞香ちゃん。
私は彼女のことずっと好きなんで、過大評価しかしませんけど、茅野が暴走するところとか、本当に引き込まれた。
なにより容姿が良いから絵になるし、あのかわいい茅野ちゃんが…っていう落差に釘付けになった。
茅野ちゃん今作キーパーソンだったのは知ってたけど、完全に主演食ってるなって思いました。渚霞む霞む(笑)
舞香ちゃんの役の幅が広がる役になるんじゃないかなって思うので、他の生徒役のみんなにもこの作品がそういう作品になれば良いなって心から思えた。
あと、ジヨンちゃんも前作から比べて日本語のセリフ回しが上手くなっててすごいと思った。ビッチ先生かっこよかったな〜
 
 
最後の最後で、椎名桔平さんが、ほんの2、3秒で目に涙を浮かべる表情をするんだけど、それには全て持ってかれたな!
数秒間のシーンで気持ちが全部伝えられるあの演技は本当にすごい!!!
 
 
前作を観た時、自担(当時)を大きなスクリーンで観ることができたのがすごく嬉しかったのを覚えてる。私は、それまで、山田くんに与えられる俳優仕事に不満をいっぱい持っていた。全部山田くんは悪くなかった。余計不満だった。だから、山田くんの俳優仕事に期待してなかった。
それが、前作を観て、お芝居をする山田くんが好きだと思えた。これからもっと大きくなってほしいと思えた。
あれから、山田担ではなくなったこともあいまって(これが一番大きな変化かも)、不満は一つもなかったし、不安もなかった。
山田くんがこの作品を大切に思っているのもいろんな言葉から伝わって来てたし、自分のためじゃなくて、グループのためにとか、出演してる生徒役のキャストのためにとか、いろんな人のためにがんばっているのが伝わってきて。
今回、生徒みんなにスポットが当たっていて渚の出番はあんまりなかったけど、カルマとの対決シーンとか最後の殺せんせーとのシーンとか大事なところでちゃんと存在感を発揮していて、さすがだなと思った。
 
 
最後の泣きのお芝居は、山田くんの真骨頂だなと思った。真っ直ぐ頬から顎に伝う涙にこっちも泣かずにはいられなかった。
 
この作品は、山田くんの青春だと思う。前作同様、現場の雰囲気が良いんだなっていうのが伝わってきたし、そういう雰囲気を主演として作ってるんだろうなとか、これまではいろんなものを背負っていたけど、作品に全てを集中させて打ち込めたんじゃないのかなというのが伝わってきました。
 
 
動員数が今年?最速で100万人を突破したそうですね。
結果がちゃんとついてくることが多くなって本当によかった。
ニノも出てるし、二宮担が観ても損はないくらいだけど、山田くんはニノとも良い関係も築いていたし、主演として求められる以上のことを果たしてくれたんじゃないのかなと思います。
 
超個人的に思うのは、羽住監督のやり過ぎな演出は山田くんにすごく合うなって思ったので、また羽住組に呼ばれるといいなって思うし、監督にも「また仕事したい」って思ってもらえてたら嬉しい。そして、この作品を観て「山田くんと仕事してみたい」って映画関係者の方、ドラマ関係者の方が一人でも多くいたらいいなと思います。*1
 
 
山田くんには、ニノみたいに有無を言わせない俳優になってほしい!日本アカデミー賞授賞式で言っていたように、先輩の背中を追いかけてほしい!!
とっさに求められたコメントで、山田くんの謙虚すぎる部分が出ちゃったけど、本当は追い抜きたいと思ってるはずだからぜひ!普段は高飛車なんだから!(笑)
 
 
いやー、本当に映画観れてよかった。観に行けないと思ってた。笑
 
 
 
 
 
 

*1:「ピンクとグレー」の時、行定監督から菅田くんに対しては「また仕事をしたい俳優の一人ですね」って言葉が出たけど、裕翔くんに対しては言ってくれなかったのが本当に悔しかったので