門限の9時

ここに無い魔法 帰りの電車

「ドリアン・グレイの肖像」 感想

いきなりだが、私は、中山優馬くんが大好きだ。
芸能人として彼が好きで、テレビや雑誌はチェックしていたが、舞台に直接足を運んだことは一度もなかった。

「かっこいいに決まっている」
わざわざ高いお金を払って舞台に行かなくたって、優馬くんがかっこいいことはわかってる。どうせ、担当レベルの気持ちを持って観劇できやしないのだから、感想は優馬くんがかっこいいということに落ち着く。
そういう先入観がずっとあったから。

かっこよくない中山優馬を私は知らない。
いつだって一人だけ違うオーラを放って、妙に落ち着いてて、不思議に感じることもあったけど、格好悪いところなんて一つもない人という印象だった。

しかし、ある時、とあるCDランキングで、優馬くんの順位より、その前週発売のHey!Say!JUMPのシングルの順位が上にいたことがあった。その状況を目の当たりにして、私の優馬くんに対する気持ちが変わった。
一人で頑張る優馬くんと9人もいるHey!Say!JUMP。
いつだって、優馬くん中心に世界が回っているもんだと思っていた。NYCだって、Jr.時代のユニットだって、優馬くん中心にすべてが構成されているように感じることが多かった。だから、優馬くんには、ぐうの音も出ないくらい、いつでも前を向いててほしかった。他の人が羨むもの手に入れて、背負った宿命なめんなと言わんばかりに若手の先頭で、凛と佇んでいてほしかった。
よりによってJUMPが、前週発売のJUMPが、優馬くんの上に立ってしまうという構図になってしまったのが申し訳なくて、だれに対してか分からないが、「中山優馬をかっこ悪くするな」と憤慨した。

プライベートでの交流はあるようだが、もうNYCとして一緒に活動することはないのだろうと思うからこそ、同世代の脅威であり、象徴的存在になってほしかったし、優馬くんがかっこ良くいてくれなかったら、若手のジャニーズがかっこよくみえない、なめられるくらいに思っていた。


優馬くんがかっこ良くて、脅威であることをきちんとこの目でみたい。他の同世代とはやっぱり違うと、この目で確かめたくて、買うつもりはなかった1stアルバムを買った。作詞を担当した収録曲で「僕には自信がある」と歌っていたのに強く心を打たれた。
ファーストソロコンサートにも足を運んでいた。「僕がいるよ 叫んでくれよ すぐに駆けつけるさ」。優馬くんに対する愛や、期待を一身に受けても尚、人のことを思える優馬くんの器の大きさを目の当たりにした。





「ドリアン・グレイの肖像」
発表された時、自分は行くんだろうと思っていた。しかし、自分の就職活動もどうにかしなくてはならないという思いで、申し込み締め切りを見送った。
しかし、気が付いたらチケットを探して、お譲り頂くお約束をしていた。その間の気持ちの変化の記憶がまったくない。本当に導かれたように、私はこの舞台を観に行くことを決めていた。


重たい宿命を背負わされながら、「僕には自信がある」と言う優馬くん、他人の思いを受け入れる余裕のある優馬くん、そして、新たに加わった、舞台に立つ優馬くんの姿。

思ったことは、この人は鏡のような人だということ。
不安や悩みもあるだろう、傷だってたくさんあるだろう。でも、愛や期待で全て跳ね返してみせる。まるで、不安なんてないように、他の人とは違う、とても強い人だと思うくらいに、後ろ向きなものを見せない。私たちが優馬くんにぶつける感情だけを受け止め、それだけを映して、輝いている。
まさにスポットライトの光を浴びた美しい姿と、キラキラとした瞳そのものだった。


あんなに、一寸の曇りなくキラキラと輝いた人を初めて見た。輝くというより輝きを放っていた。むしろ、煌めいていた。
舞台自体は、華やかなシーンから始まり残酷なラストが待ち受けるようなものだったが、華やかな場面で優馬くんが纏っていた華やかな衣装も、優馬くんの華やかさには敵わなかったし、物語終盤、目を開けていられないほどの残酷なシーンになればなるほど、美しさが際立っていった。

優馬くんが美しい人だからこそ、演じることができた美青年役。その、優馬くんが生まれ持った美しさという武器を、ここまで凶器として使ったのは初めてなのではないかと思うほどだった。
ドリアンを演じる優馬くんが放つ輝きが、震えるほど怖かった。
キラキラと輝く瞳が、強いまなざしがこちらのほうを向けば、背筋が凍りついた。


優馬くんの持った華やかさや美しさは、人を惹きつける。優馬くんの眼差しは、有無を言わせない説得力がある。
「僕には自信がある」
なんて、なぜ言えるのか、ずっと不思議だった。でも、この舞台を観て、かなり腑に落ちたような気がしている。

優馬くんには本当に隙と言うものがない。
辛い顔なんて見たことがない、後ろ向きな発言なんて聞いたことがない。
「美しさ」や「若さ」は、年月と共に変わりゆき、失われるものかもしれないが、結局残るものは中身であり、気持ちなのだと思ったりした。
心の綺麗さ、気持ちの余裕は、外にも表れる。美しいものに人が導かれていくのは、当たり前のことなのかもしれない。
目じりにシワが出来たって、心から笑う人は美しい。前を向き続け、期待を背負う人の言葉やパフォーマンスは美しい。

跳ね返すだけでは、跳ね返すものがなくなったときに、すぐに倒れてしまう。
きちんと受け止めることができることが、きっと彼の言わんとする「自信」なんだろうと私は思う。

彼の心の中は、きっと私の想像を絶する世界が広がっているのだと思うと、胸がキュウッと締め付けられる。
でも、それを察することもさせないくらい、鏡のように反射させる優馬くんの強さは、舞台に立つ表情や声、まなざしに表れているような気がしたと同時に、舞台に立つ、ファンの前に立つことを心から楽しんでいるような気持ちも伝わってきた。

輝くことで優馬くんは立ち続けているんだと思う。
どれだけ年を重ねても、どれだけ嫌な世の中でも、優馬くんのそういうすべて反射させるところは変わらないでいてほしい。
心から言えない時もあるかもしれないけれど、「僕には自信がある」と歌い続けてほしい。
ぐっとこらえて、前を向き続けて、強くいてくれる優馬くんなら、ドリアンのように、変わらない見た目と醜くなる自分のようなギャップに屈することなく立っていられるような気がします。


ドリボはたぶん行かないと思いますが、映画は観に行くつもりでいます。
応援とは違う気持ちかもしれないですが、優馬くんの活躍をずっとずっと見ていたいと思っています。
何度も言います。中山優馬に出会えて良かった。

次、優馬くんのことを書くことがあったらもっと上手に優馬くんへの「好き」を表現できるようになっていたいです。














「ドリアン・グレイの肖像」side story



ちょっとだけ自分の話をします。


私は高校3年生の時、最終的に2つの大学から合格通知をもらいました。そのうち1つの大学に優馬くんが合格したというニュースを聞いており、私は迷いました。進学か浪人以外の進路がない環境にいたおかげで、なぜ大学に行きたいのかも分からなかった当時の私にとって、優馬くんと同じ大学の同級生になれることは、素敵な大学生活の予感さえ感じるほど惹かれる選択肢でした。なにより、優馬くんがあの大学に受かったと聞いて、一気に親近感が湧いたのです。もちろん一般入試ではなかったですが、いわゆる超難関私大ではなく、あの大学を選んだというところが、優馬くんが人間だと認識した瞬間だったのです。
結局、優馬くん抜きに比較して、いろんなことを考え、いろんな人の意見も聞いて、私はもう1つの大学に進学し、優馬くんは1年も経たずに大学を辞めました。この4年、この選択で良かったのか、優馬くんを抜きにしてもそう思うことが多かったですが、良いと思えるように過ごそうと思ってきました。優馬くんがいなかったら、迷うこともなかったかもしれません。でも、迷ったことで、選んだ方を選んで良かったと思えるようにしていくことって大事なんだと気づきました。

そして、今、大学4年。私は就職活動の傍ら、この舞台のチケットを探し、某日夜公演のチケットを当日手渡しでお譲り頂く約束をさせて頂きました。観劇を本当に楽しみにしていたので、就職活動も精が出ました。
しかし、前日夕方。選考が進んでいた企業からの連絡。
「最終面接のご案内です。明日の17:00から来て頂けますか?」
私は、「え…」と言葉を詰まらせてしまいました。
17:00から1時間ほどの面接、開演は18時半。その前にチケット取り引きもある。頭の中でいろんなことを考えました。
「予定無理そうかな?」
この会社は、提示された日程で面接を受けられないとそこから改めて連絡が来ることはないと聞いていました。最終面接まで辿り着いた私に断ることなど出来るわけもありません。
「…大丈夫です。よろしくお願いします!」
「来て頂けますか!予定あったんじゃない?ごめんね?じゃあ、持って来て欲しいものがあるんだけど…」


大学受験に引き続き、私の進路の行く手には中山優馬。ねえ、君は私の何なの?
私は今回も、彼を選べませんでした。


真っ先に、お約束していた方に謝罪をしました。取引相手の方には、チケット取引の時から、本当に本当に良くして頂いており、本当に申し訳ないと思い、新しいお譲り先が見つからなかったら、お支払いだけはしようと思っていました。
すると、お相手の方が私の事情をご理解して下さり、局留めを利用してチケットを受け取る方法を提案して下さったのです。
開演に間に合わないことには変わりはなかったのですが、前日にドタキャンすることになってしまった非情な私にチケットをお譲りして下さるなんて、と本当に嬉しかったのです。
私は彼のいる方を選べなかったのに、本当に嬉しくて、より私を奮い立たせました。

最終面接は、蓋を開ければ意思確認のようなもので、予定の1時間よりかなり短い30分弱で終了し、即目的地に向かいました。


郵便局でチケットを無事に受け取り、こんなに良くして下さったお相手の方に、お礼のお菓子を買い、電車に乗れば完璧!という所に、電車の乗り場が分からず迷子に!駅員さんに案内してもらって電車に飛び乗り、新国立劇場


もちろん、既に開演しており、劇場に入るとまず舞台上で歌を歌う優馬くんの姿が飛び込んできました。
遅れて入り、ステージ近くの座席まで長い距離を歩くリクルートスーツの私に、きっと優馬くんは気づいただろうとは思いますが、遅れて入ることが優馬くんの集中力を散らすのではないかと申し訳なく、観劇している人の邪魔をするのも申し訳なく、俯いたまま座席に着きました。
申し訳ない気持ちいっぱいで恐る恐る顔を上げると、目の前に優しい声で歌う優馬くんがいました。
前日に面接の連絡を受けた時には、想像もしていなかった現実で、夢か幻なのかという感覚がしばらく続きました。

優馬くんは私にとって不思議な人です。
担当ではなく、あくまでNYCという大好きなグループのメンバー1人という感覚で、大好きですが、自分で申し込んでチケットを取るほどでもないような気がしていました。なのに、導かれたように、劇場に私は居ました。


私の人生の先を決める瞬間に、ふっと現れるのです。


舞台に立つ優馬くんは、この世の物とは思えないほど、まばゆい輝きを放っていました。
「ねえ、君は私のなんなの?」
そう心の中で何度も何度も問いかけました。


劇中、シビルという女性は、ドリアンを想って自らの命を絶ちました。
優馬くんがいるからと、同じ大学を選ぼうとしていた自分、面接を断って優馬くんの舞台を観に行こうと一瞬思った自分、優馬くんがいる方を選ぼうと思ってしまう自分と重なるような気がしました。

シビルが私が、なにを選ぼうと、ドリアンは、優馬くんは、美しいままです。心の中はどうかは分かりません。
思いが強いと、人は行動します。本人の気持ちはどうであれ、人を動かす気持ちにさせるところが、彼の凄さだと思いました


心から、思うことですが、優馬くんが、美しく、華やかで居てくれると安心します。優馬くんが、前を向いて、歩みを止めないことが、刺激にもなります。やっぱり同世代の先を走り続けて欲しいし、まとめ続けてほしいし、舞台に立ち続けてほしいと思います。
嫌になることもあると思います。
ドリアンが、変わらない見た目と変わりゆく肖像画の表情に着いていけず、辛い思いになったように、優馬くん自身も、考えることもきっとあると思います。
それでも、「僕には自信がある」と優馬くんには歌っていてほしいです。Chapter1と線を引き、「振り返らない My Past 前向いて Future」と歌うのなら、より強く前だけ向いていてほしいと思います。隙が無さ過ぎて、強く見えて、私が選ばなくても優馬くんは・・・なんて思ってしまいますが、いろんな意味で、いつか、優馬くんを選べる人になりたいな、なんて思いました。