門限の9時

ここに無い魔法 帰りの電車

端的にまとめてツイートすれば十分な話

お前しか見えない


こんなセリフが飛び出る恋愛はしたくない。今日はジャニーズも何も関係ないつまらない独り言です。悪しからず。


私の通う大学は最寄り駅からしばし歩かねばならない。授業直前の時間帯ともなれば学生が長い列をなして歩いている。私はその人混みが嫌で(どうしても1人でも多く抜かさないと気が済まないのですw)、少し早い電車に乗って学校に行くのだが、その日は寝坊していつもより遅い電車に乗った。朝から鬱陶しく思いながら人を抜かし歩いていると、少し前に森ガール風な可愛らしい女子が歩いていた。

洋服もカバンも可愛くて、朝から癒されていたのだが、その彼女は少し残念だった。


靴が大きいのか、足を上げる度にかかとが抜けてしまっているのである。そのかかとをよく見ると、履いている靴下がかかとの部分だけ穴が開いてしまっているのだ。


自分の足の裏はなかなか気づかない。そこまで気が回る場所でもない。自分も靴下のかかとが開いていないか少し気になりながらも、彼女の後ろ姿を見つめ歩いていると、私の目が彼女の横顔を捉えた。


彼女は1人で歩いていたのではなく、彼氏と思われる男子と並んで歩いていたのだ。

彼氏と思われる男子は背が高く、服装もおしゃれでなかなかのお似合いカップルだとほっこりした。


彼を見上げる彼女の横顔も可愛らしく、「こんな可愛い彼女がいていいなあ彼氏」と思ったわけなのだが、やはり気になるのは穴の開いた靴下である。



きっと彼は気づいているわけないだろう。彼女の隣を歩いているのだから。

彼女が朝目覚めてから可愛らしい洋服に着替え、メイクをし髪を整えた姿を、彼は見ているのだ。彼女が鏡を覗いて自分自身にオッケーを出した姿を見ている、靴下の穴も知らずに今日も可愛いと思っているのだろうと思ったら、ふいにこの


お前しか見えない=お前も見えてない


というセリフが脳内に浮かんだのである。



今さらだが、その二人が本当に付き合ってるかどうかは知らない。付き合っていると仮定したとして、結局全部知ったつもりになっているだけなんだと思ったのである。


お前も見えていないのに、好きだの愛しているだの一番だの(その彼が言っているかは知らん)、大袈裟だけど何が愛だよと思った朝の出来事だったわけである。


ある意味こじつけ?だが、私はそんな恋愛は嫌だ。

私が気づいていない靴下の穴に気づいてくれる人がいい。気づいて「穴が開いている」と教えてくれる人がいい。いや、靴のサイズがピッタリだったら、かかとなんて見えないはずなのだから、「靴大きいんじゃない?」と言ってくれる人がいい。ということは、大きい靴を履いていることに気づいてくれる人がいい。

ということは、隣を歩くだけじゃダメだってことだ。時には前を時には後ろを、右を左を歩いてくれる人がいいってことだ。


私もそういうふうに人になりたい。


寒い。痛い。分かっている。もちろん理想の理想である。


「お前しか見えない」と恋人に言われた時には私は多分お別れをするだろうと思う。そんな言葉嬉しくもなんともない。照れ隠しでも強がりでもなく、心の底から「いや、周りも見ろよ」と冷静に言ってやりたくなる。今のところそんな恋愛に溺れるタイプの人に出会ったことはないし、きっとこれからもそういう公私混同タイプの人に恋をすることもないだろうとは思うのだが、そういうのって紙一重だなとも思うのである(笑)



結局、何が言いたいかと言うと、「好き」だけ並べた恋愛ほど曖昧なものはないと思うということだ。よく「好きなだけじゃ結婚は出来ない」と言う人がいるが、それは恋愛も同じだろうと思うのだ。好きなだけの恋愛にはトキメキはあるかもしれないが、それならリア恋枠のアイドルで十分じゃないかと思うのである。その方が遥かに楽だ。


一番とかお前しかとか、何かと比較するような言葉は要らないし、そもそも「好き」という言葉だって「嫌い」があって初めて成り立つ概念であって、そもそも好き嫌いも無意識の基準で比較してるわけであって、前にJUMPにあまり比較級を使いたくない、出来る限り最上級のみで言い尽くしたいってふと思ったけど、それと同じ感じで(まあJUMPに対してはモンペという立場になってしまうから最上級にしたいと思うんだけど、恋愛に関しては比較級じゃなければなんでもいいくらいには思ってる)、あまり比較したくないという冷めてるんだかロマンチストなのかよく分からない感じで、とにかく自分は今すごく極端で捻くれたことを言っている自覚はある。


でもどうしても比較をしなきゃ伝わらないなら、一番好きな人ではなく、一番嫌いになれない人が理想だと思ったりするのである。


そもそも、結婚願望は愚か恋愛願望もない私にとっては机上の空論以外の何物でもないわけだが、もしかしたら一度、お前しか見えなくなる恋愛をすれば「好き」が上手に受け取れる人間になれるのかもしれない。純粋だった高校生に戻りたいぜ!!